リチウムイオン二次電池の主要部材に使われているナノ粒子

リチウムイオン二次電池(LiB)は軽量で優れた充放電特性を生かして、スマートフォンやタブレット、ノートPCなど、数多くの携帯型電子機器に搭載されています。最近では自動車の電動化に伴い、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)といった自動車の大容量バッテリーにも使われはじめています。

自動車の電動化は世界各国の国策も相まって急速に進んでおり、今後数年間で世界のリチウム二次電池市場が急拡大していくでしょう。

世界のリチウムイオン二次電池の市場規模はおよそ2~2.5兆円程度と言われていますが、これが2021年には4兆円以上の市場規模になるだろうと予測されています1)

1)リチウムイオン二次電池世界市場:車載専用がけん引、2020年には小型民生用を上回るー2021年に4兆円突破 二次電池の45%を占める

2017.9.21 株式会社富士経済 マーケット情報

リチウムイオン二次電池の市場が急拡大すると、それに伴いリチウムイオン二次電池を構成する部材、原料需要が急拡大しますが、リチウムイオン二次電池の部材原料の中には資源的に不足が懸念されているものもあり、回避が課題になっています。

リチウムイオン二次電池の主要な構成部材

大きく分けて、正極材料、負極材料、電解質、セパレーター等があります。

正極材料

・コバルト系正極材料(LiCoO2 コバルト酸リチウム)
・ニッケル系正極材料(LiNixCoyAlzO2 NCA系)
・マンガン系正極材料(LiMnO2 マンガン酸リチウム)
・オリビン鉄系正極材料(LiFePO4 リン酸鉄リチウム)

負極材料

・黒煙(C グラファイト)

電解質

・リチウム塩(LiClO4 過塩素酸リチウム、LiPF6 ヘキサフルオロリン酸リチウム、LiBF4 ホウフッ化リチウム)

・有機溶媒(C3H4O3 エチレンカーボネート、C4H6O3 炭酸プロピレン)

セパレーター

・樹脂多孔質膜(ポリオレフィン、ポリエステル、各種複合膜等)

この中で、不足が懸念されているのは、コバルトニッケルといった希少金属。また、フッ素も原料となる蛍石が高騰している模様。コバルトは、先日アップルが将来の不足を懸念して、採鉱会社からコバルトを直接調達するニュース2)があったばかりです。

2)米アップル、コバルトの直接購入検討 EV普及で争奪戦

2018.2.22 日本経済新聞ウェブサイト

これらの原料不足で供給が追い付かなくなったり原料が高騰したりするとコスト的に合わなくなってLiBが製造できなくなってしまいます。

そのため代替材料の研究開発が進められているのですが、この代替材料の高性能化にナノ粒子も一役買っているのです。

ナノ粒子化によるリン酸鉄リチウム正極材料の高機能化

コバルト系やニッケル系の原料不足が心配されるなか、安価で豊富な鉄系の正極材料に注目が集まっています。

オリビン型リン酸鉄リチウムLiFePO4)は、耐熱性が高く比較的安全性の高い期待の材料ですが、Liイオン伝導度が低いため、リチウムイオン二次電池の充電時間がかかったり、出力特性が低くなるといった課題を抱えていました。

そこでリン酸鉄リチウムのLiイオン伝導度を上げるために、リン酸鉄リチウムをナノ粒子化したり、カーボンのような導電性物質とのナノ複合化によってLiイオン電導度をあげて、実用化に至っています。

今後、ナノ複合化構造の最適化により、リン酸鉄リチウム系のリチウムイオン二次電池はさらに性能向上していくでしょう。また、製造プロセスの最適化による、更なる低コスト化も期待されています。

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