難溶性薬物のナノ粒子化技術

医薬品の多くが難溶性の化合物(難溶性薬物)であるといわれている。

これら難溶性薬物を水に溶けやすくすることができれば、さまざまなメリットがでてくる
薬剤が水に溶けやすくなると、体内への吸収が行われやすくなり、薬剤の効果を発揮しやすくなる。

つまり、体への吸収性が悪くて効きが悪かった薬の性能向上にもなるし、少量で効くようになるので高価な薬剤の使用量をへらし、費用削減にもなる。また、これまで溶解性の問題で開発を断念していた化合物が使えるようになれば、新薬の創出機会が増えるかもしれない。

このため、難溶性薬物の可溶化技術が最近注目を集めている。

水に溶けにくい物質を水に溶けやすくする方法の一つに、微粒子化(ナノ粒子化)があげられる。ナノ粒子化しナノ粒子化によって、重量あたりの表面積が増え、水などの溶媒に接する面積が増えるため、溶けやすくなる。

難溶性薬物をナノ粒子化するには、一般的なナノ粒子製造プロセスが適用できる。

ナノ粒子の製造プロセスには、大きく分けてビルドアップ法とブレークダウン法がある。今回は汎用性を考慮しブレークダウン法によるナノ粒子化プロセスについて紹介する。

ボールミル、プラネタリーミル(遊星ボールミル)

ボールミルはセラミックボールなどの粉砕メディアを入れたポットを回転させることにより、粉砕を行う装置である。粉砕メディアどうしや粉砕メディア-ポット壁間のインパクトによって物質を粉砕、微粒子化する。装置の機構が単純なため、工業的にも広く用いられている

プラネタリーミルは遊星ボールミルともいわれ、ボールミルのポットが自転するだけでなく、公転もできる装置である。機構がボールミルに比べて複雑となり装置が大きくなるが、複雑な動きができるため、より均一に微粉砕を行うことができる。

これらの装置は、一般的にも、粉体の微粒子化や、固体どうしの分散、固体ー液体(スラリー)の混合・分散に用いられている。

難溶性薬物のビーズミル、プラネタリーミルを用いた可溶化技術

固体中へのナノ粒子分散(乾式処理)

難溶性薬物と易溶性物質(可溶性バインダー)を混合し、ボールミルやプラネタリーミル処理を行うことで、難溶性薬物の微粒子化(ナノ粒子化)と同時に可溶性バインダー中へ薬物をナノ分散させることができる。

液体中へのナノ粒子分散(湿式処理)

難溶性薬物と水などの液体の分散媒を混合し、ボールミルやプラネタリーミル処理を行うことで、難溶性薬物の微粒子化(ナノ粒子化)と同時に水などの溶媒中へナノ分散(スラリー化)させることができる。

ビーズミル、プラネタリーミルでの難溶性薬物ナノ粒子化の注意点

コンタミネーション

粉砕メディアどうしや、粉砕メディアとポットの壁がぶつかることで、これらが摩耗し、少量ではあるが粉砕物に混入するおそれがある。このため、メディアやポットの材質選びや、粉砕物へのコンタミネーションの管理が重要となってくる。

ナノ粒子化処理による変性・変質

ブレークダウン法は、物質に衝撃を与えて微細化するプロセスのため、部分的に高い圧力がかかったり、高温が発生したりする。このとき、粉砕物が熱や圧力に弱い物質だと性質が変わってしまうおそれがあるため、ボールの大きさや比重、ポットの回転速度を調整し、衝撃の強度を適宜最適化する必要がある。

再凝集

ボールミルやプラネタリーミルによる粉砕処理を続けていくと、粉砕された物質に新たな界面が発生し、その比率が増大していく。新生界面はエネルギーが高く不安定な状態のため、新生界面の比率がある程度のところまで増えると、新生界面同士が再びくっつくことによって安定化をはかろうとし、再凝集する。

再凝集を防ぐためには、一般的に分散剤が用いられる。新生界面同士が凝集する前に分散剤をくっつけることにより、安定化させる。

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