2018.6.28
東京工業大学 科学技術創成研究院の原亨和教授、チャンドラ・デブラジ特任准教授らの研究グループは、「面心立方ルテニウムナノ粒子触媒(FCC–Ru)」により、工業的に有用な芳香族アミンを副産物なく製造する方法を開発した。
芳香族アミンは、医薬品やゴムやプラスチックの原料として広く用いられており、既に工業的に多量に生産されている化成品である。しかしながら既存の触媒を用いた生産では、製造時に出る副産物によって、環境的にも負荷がかかったり、コストが高くなったりしていた。
今回、東工大の研究グループは、製造時に使われるルテニウム触媒をナノ粒子化することにより触媒の結晶構造を変え、反応を最適化することによって副産物を減らすことに成功した。
通常、ルテニウム触媒の結晶構造は、六方最密充填(HCP)構造をしている。六方最密構造のルテニウム(HPC-Ru)は還元力が強く、アミノ化反応を促進することが知られているが、今回のような芳香族アミンの合成では、生成した芳香環まで一部還元されてしまい収率が低下してしまう。
そこで、ナノ粒子化することによって通常は六方最密で安定なルテニウムを面心立方構造に(FCC–Ru)し、触媒の還元能力を適切にコントロールすることができたとのこと。
ルテニウムのナノ粒子化による結晶構造のコントロールと触媒への応用は京都大学の北川教授の研究室で取り組まれており1)、当研究会でも以前に紹介したが、各方面で研究が発展していくのは大変喜ばしいことである。
1)新しい構造を持つ金属ルテニウム触媒の開発に世界で初めて成功-家庭用燃料電池エネファームの耐用年数向上へ-
2013.4.4 京都大学プレスリリース