マツダ、貴金属シングルナノ触媒技術を実用化し、新型車「アクセラ」に搭載。世界初。

マツダ(mazda.co.jp)は、排気ガスの浄化に使われている貴金属ナノ粒子触媒の技術改良に取り組み、貴金属触媒の使用量を約70%も低減しつつ、平成17年基準排出ガス75%低減レベル(SU-LEV)(国内モデル)を達成するシングルナノ粒子自動車触媒を開発した。

マツダ、貴金属の使用量を約70%削減できるシングルナノ触媒を世界で初めて実用化 -新型「マツダ・アクセラ」へ採用し、順次展開の予定-
2009.1.8 マツダ株式会社 ニュースリリース

自動車の排気ガス浄化には、レアメタルが使われている

一般的に自動車の排気ガスを浄化する触媒には、希少金属資源(レアメタル)であり、価格的にも高価な貴金属材料が用いられています。

例えばガソリン車の代表的な触媒は、三元触媒と言われ、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった希少な貴金属元素が使用されています。

もし、触媒の貴金属使用量を減らすことができれば、省資源化により環境負荷を低減し、さらに自動車の低コスト化も期待できます。

レアメタルの使用量低減には、ナノ粒子化が有効

では、触媒のレアメタル使用量を減らすにはどうすればよいでしょうか。

世界的に取り組まれている主な方策としては大きく2つあり、1つ目は触媒の組成を変えることで、レアメタルを極力使わない元素組成の触媒を新たに開発することです。2つ目は単位重量当たりの触媒の性能を上げることです。同じ組成の触媒でも、触媒の性能(効率)を上げれば相対的に触媒の使用量を減らすことができ、レアメタルの使用量削減に貢献出来ます。

今回の成果は後者の、「触媒の組成は従来と同じでも、相対的に触媒の使用量を減らすことができる」技術になります。

レアメタルの使用量低減には、ナノ粒子化が有効

排気ガスをきれいにする化学反応は、触媒の表面で行われ、通常、触媒の内部では行われません。よって、触媒の表面をふやすことで、触媒の性能を上げることができます。

触媒の表面積をふやすためには、触媒となる貴金属の粒子サイズをさらに小さくする(ナノ粒子化)が有効です。

触媒のナノ粒子化により、触媒の重量当たりの表面積を何倍にも高めることができ、その分触媒性能の向上が期待できます。

今回のマツダの発表によると、従来の貴金属の粒子径を10nm以上から5nm以下と大幅に小さくすることにより、少ない貴金属使用量で触媒性能を確保することに成功したということです。

貴金属ナノ粒子の拡散移動・凝集を抑制、耐久性を向上

ただし、いくら粒子径を小さくしても、従来の触媒のようなベースの触媒担体上に貴金属を付着させただけの構造では、排ガスの熱で貴金属ナノ粒子が拡散移動し、触媒が凝集してしまいます。

凝集するとせっかくナノ粒子化によって増えた貴金属の表面積が減少し、期待通りの触媒性能を発揮できなくなるため、いかにナノ粒子の凝集を抑制するかが開発のポイントになってきます。

マツダが今回開発したシングルナノ触媒は、触媒担体に貴金属ナノ粒子を埋め込む独自の構造を開発し、シングルナノサイズのまま貴金属ナノ粒子を固定化することに成功しています。その結果、過酷な使用条件でも貴金属の凝集を抑制し、浄化性能を維持することが可能となったと思われます。

シングルナノ粒子触媒はマツダ・アクセラの新型車に採用、実用化推進を加速

同社は今後、開発したシングルナノ触媒の採用を順次拡大し、希少金属の使用低減とともに排出ガスのクリーン化に貢献していくとのことで、同社の自動車の環境性能が一層高まっていくと思われます。

(追記)

この技術をさらに発展させ、直噴ガソリンエンジンであるSKYACTIVにも応用、2011年7月より採用を開始されているとのことです。さらに、ディーゼルエンジンのDPF触媒にも適しているとのことで、同社の革新的クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-Dにも展開、シングルナノ粒子触媒の応用、実用化がいっそう加速している模様です(下記参考情報)。

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