二酸化炭素からエタノールを合成するナノ粒子構造体

nano_161113_1

二酸化炭素(CO2)から炭水化物などの有機物を合成する方法として、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、植物の「光合成」だろう。空気中のCO2と水から光エネルギーを利用してデンプンや糖などの炭水化物を合成する「光合成」は、自然が生み出した芸術的な光化学反応である。

光化学反応までいかなくとも、電気化学的反応によって二酸化炭素から炭水化物が合成できれば、エネルギー変換・貯蔵の新たなルートが拓ける可能性がある。

すなわち、太陽電池で得られた電気を利用して、CO2からの有機物合成ができれば、間接的にではあるが太陽光を利用したCO2の有機物変換が実現するだろう。

また、発電で余った電力をCO2の有機物変換に利用できれば、電池等による蓄電以外のエネルギー保存方法として有効活用できる可能性がある。

このため、世界中でCO2の電気還元による有機物への固定化の研究がなされている。これまでにメタンやメタノール、エチレングリコールなどへの変換が報告されている。

そういった中、アメリカ合衆国のオークリッジ国立研究所の研究チームは、スパイク状の窒素ドープしたグラフェンと銅ナノ粒子からなる特殊な触媒を用い、電気化学的反応によってエタノールを合成できたとの報告があった。

Nano-spike catalysts convert carbon dioxide directly into ethanol.

Oct.12, 2016
Oak Ridge National Labolatory (ORNL) News Release

これによると、ファラデー効率が63%で、選択率が84%とのこと。使用された電力のうち、63%がエタノール生成に寄与できていることになる。また、できた有機物のうち、84%がエタノールというのも驚きだ。これまでに東芝がエチレングリコールへの変換で、ファラデー効率80%を達成しているが、今回の発見はエタノールへの変換でそれに迫る値を得られたことが大きい。

エタノールにしてもエチレングリコールにしても水中に溶け込んだCO2を変換に利用するため、実用化にはまだまだクリアしなければならない課題が多いが、今回の発見は将来のエネルギー運用の方向性を多方面から考える良い機会になるだろう。

【ウェブサイト】

Oak Ridge National Laboratory (ORNL) Website

二酸化炭素をエチレングリコールに変換する人工光合成向け分子触媒を開発~株式会社東芝 研究開発ライブラリ(2015年9月)

スポンサーリンク

フォローする

スポンサーリンク