電気自動車の性能向上に寄与するナノ粒子電池材料

世界的にガソリン車やディーゼル車から電気自動車へのシフトが急速に進んでいる。

欧州では、ボルボが2019年以降の全ての販売車を電気自動車(EV)やハイブリッド車にする1)のを筆頭に、メルセデス・ベンツ(ダイムラー)が2022年までに全車種にEVやハイブリッドモデルを投入2)、フォルクスワーゲンも2030年までにグループの全300種以上のすべてのモデルにEVやハイブリッドモデルを投入する計画3)で、ここにきて自動車メーカーの脱ガソリン車、脱ディーゼル車化の動きが加速している。

また、政府主導での電気自動車へのシフトも始まっていて、既に英国政府やフランス政府が2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を全面的に禁止の方針4)を打ち出しており、中国政府も検討を始めている5)とのことである。

ここにきて各国が電気自動車にかじを切った理由としては、自動車メーカーの多くが年々要求レベルが高まる環境性能への対応に苦慮していることや、内燃機関から電気自動車への産業構造の転換を有利に進めたい各国政府やメーカーの思惑がうかがえる。

フィーチャフォンといわれる従来型の携帯電話がスマートフォンにとって代わられたように、世の中のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの自動車がなくなり、一気に電気自動車ばかりの世界になるのだろうか?材料科学者のわたしにとっては、もはや想像の世界でしかない。

ただ、電気自動車が普及するためには、いま以上に部材の高機能、低コスト化が求められているのは確かなようだ。

電気自動車に用いられる部品の代表的なものには、

・モーター

・2次電池

・キャパシター

・躯体(構造部材)

などがあり、それぞれの部品の部材に対して、

ナノ粒子を応用した高機能化の研究がなされている。

モーターに使われるナノ粒子

モーターの高効率化には強力で安定な磁石が必要で、ジスプロシウムなどの希土類(レアアース)が使われている。ジスプロシウムのような産出量が少なく、世界的にも限られた場所でしか産出されない資源は供給面で不安定である。電気自動車の生産量が増えると、レアアースが不足し価格高騰するので、普及が妨げられるという意見もあるくらいだ。

このため、レアアースを使わない磁石の開発に期待が集まっている。

NEDOの「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」プロジェクトでは、ナノ粒子を用い、希少なジスプロシウムを使わない、ネオジムナノ粒子焼結体や、窒化鉄ナノ粒子焼結体といった、レアアースフリーの磁石の開発が進められている6)

2次電池材料に使われるナノ粒子

電気自動車は従来の自動車と異なり、大容量のバッテリー(リチウムイオン電池のような2次電池)を搭載している。2次電池材料の高機能化にも、ナノ粒子材料が期待されている。

例えば、リチウムイオン電池の正極材料負極材料ナノ粒子化は、リチウムイオン電池の高容量化手段の代表例であり、既に一部実用化もされている。

また、次世代の二次電池の開発においても、ナノ粒子は重要な構成部材のひとつとして位置づけられている。

キャパシター

電気自動車の電気を節約し航続距離を延ばすため、回生ブレーキが使われている。

回生ブレーキは、減速時にモーターを発電機として作用させることで、発電の際モーターにかかる負荷をブレーキ力として利用している。ブレーキ時の比較的短時間に発電されるので、リチウムイオン電池のような2次電池では充電が追いつかず、充放電速度の速いキャパシターが使われ、そこにためられる。

そしてキャパシターにいったん蓄えられた電気は、加速時に有効利用される。

キャパシターは、一般的に2次電池よりも容量で劣るが、電気をためる速さは2次電池の比ではない。このため、キャパシターと2次電池を適宜組み合わせることにより、両者の欠点を補い、得られた電力を効率的に蓄えることもできる。

キャパシターの代表的なものには、電気二重層キャパシターがある。電気二重層キャパシターの容量アップのために、ナノ粒子の複合体を電極に用い、容量を増やす研究がなされている。

参考資料

1)「ボルボ、全車種をEV・ハイブリッドに 19年から」日本経済新聞(2017.7.5)
2)「メルセデス・ベンツ、2022年までに全車種を電気化」TechCrunch(2017.9.12)
3)「フォルクスワーゲン、2030年までに全300車種でEV/PHV販売–アウディやポルシェも」Cnet Japan(2017.9.12)
4)「欧州発、電気自動車シフト 「脱石油」世界の潮流に」日本経済新聞(2017.7.27)
5)「中国、ガソリン車やディーゼル車の生産・販売禁止を検討」BBCニュース(2017.9.11)
6)「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(2017.11.21)