ナノセルロース(セルロースナノファイバー)

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次世代のナノ構造材料候補として、ナノセルロースに対する注目が集まっている。

ナノセルロースは、機械的強度熱膨張率透明性分散液の増粘性チクソ性など、素材自体の物性のポテンシャルが高くユニークな性質をもっているため、高強度材料や光学材料、各種添加剤などさまざまな工業分野への応用が期待されている。

またナノセルロースは木材などの植物や、微生物からつくられるため、環境にやさしい材料としての面からも期待されている。日本には豊富な森林資源があり、早くからこの分野の研究が進められてきた。現在は、日本やヨーロッパ、カナダなどの森林資源国を中心に実用化に向けた取り組みがさかんになされている。

ナノセルロースとは

セルロース分子から構成されるナノ構造体の総称。ナノセルロースは、構造体の直径や長さ、アスペクト比などでセルロースナノファイバーCNF)やセルロースナノクリスタルCNC)に分類される。

ちょうどナノカーボンが、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブ、フラーレンやグラフェンなどに分類されるように、大きさや形で名称が分けられる

表 ナノセルロースの分類

名称 直径 繊維長 アスペクト比
セルロースナノファイバー(CNF) 3-100nm 5μm~ 大(100以上)
セルロースナノウィスカー(CNF) 3-100nm ~500nm
セルロースナノクリスタル(CNC) 3-100nm 100~300nm

セルロースの分子鎖が数本~数十本と束になった集合体がセルロースナノファイバーで、セルロースミクロフィブリルとも呼ばれている。

パルプの直径(数十μm)に比べて100分の1以下の極微細なサイズにまで木材の繊維を解きほぐす(解繊(かいせん))ために、種々の製造プロセスが開発されている。

ナノセルロースの製造プロセス

ナノセルロースの製造プロセスは、大まかに物理的プロセスと化学的プロセスに分けられ、通常は両者を併用して製造される。

物理プロセス(機械的解繊)

物理的プロセスの代表的なものには、ビーズミル法やウォータージェット法、超音波法などがあげられる。

物理プロセスではビーズ同士や高圧の水同士の衝突による物理的衝撃や、超音波で生成させるキャビテーションが、木材の組織を破壊し、繊維を解きほぐす。

その際、後述の化学プロセス(薬品等で化学処理を行い、繊維同士の結合を解きほぐす)を併用すると、より解繊効率を高めることができる。

ナノ粒子分散で知られる上記プロセスが、ナノセルロースの製造にも役立っている。

化学プロセス(化学的解繊)

化学プロセスは薬品処理によって繊維同士の結合を解きほぐすため、比較的効率よく完全一次分散が可能である点が特徴である。東京大学の磯貝教授らが開発したTEMPO触媒酸化が代表的な手法にあげられる。

最近では、より一層のコスト低減、量産化を目指して、化学処理だけでも効率的に解繊できるプロセスが開発されてきている1)2)

1) ゲル状CNF、木材パルプの化学処理のみで実現−北越紀州製紙 2017.10.17 日刊工業新聞ウェブサイト

2) KRI、セルロースナノファイバーの新製法 化学処理だけで安価に 2017.11.23 日刊工業新聞ウェブサイト

ナノセルロースの用途

増粘剤などの添加剤やナノファイバーシート、ナノ複合材のフィラー用途など、応用範囲は広い。

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