ナノ粒子の機能性

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ナノ粒子の機能~超微細な微粒子の不思議なチカラ~

「ナノ粒子」は、その小ささゆえに、普通の粒子には無いいくつかの性質を有しています。

例えば、

・小さすぎるため、人間の目で見えないこと
・表面積が大きいこと
・ナノ粒子の中でも特に小さいもの(10nm以下)は、粒子の中の電子の振る舞いまで変わってくること

などが挙げられ、科学的にも興味深いです。

こうしたナノ粒子特有の性質を機能として捉え、機能性材料としての工業的利用が始まっています。

透明性

ナノ粒子は一つ一つが小さくて目に見えないため、ナノ粒子を含んだ液体や固体の透明性を高くすることができます。

透明な液体や固体の中にナノ粒子を分散させると、分散しているナノ粒子の種類やサイズによって、透明性を保ちながら、特定の光の波長域をカットすることができます。

例えば、ガラス中に金ナノ粒子を分散させると、透きとおった鮮やかな赤色を呈するため、ステンドグラスなどに利用されています。

また、日焼け止めの多くには酸化チタンや酸化亜鉛といった紫外線をカットする粒子が使われていますが、塗った時に白っぽくなるのを防ぎ、透明感を向上させるために酸化チタンや酸化亜鉛のナノ粒子を使用しているものがあります。

その他、紫外線カット以外にも、特定の波長をカットするような機能性光学フィルムや、機能性コーティング材料にナノ粒子が使われています。

反応性

一般的に、粒子のサイズが小さくなると表面積が大きくなります。通常のミクロンオーダーの粒子の場合、表面原子の割合は1%にも満たないですが、ナノ粒子になると、およそ数%以上と、表面原子の割合が大きくなってきます。

粒子どうしの化学反応は、表面原子の部位で始まるため、表面原子の割合が大きいナノ粒子は、通常の粒子に比べて反応性が高くなります。

この性質を利用して、

・電池の性能アップ(軽量化、大容量化)
・触媒の性能アップ(反応率向上)
・ナノ粒子金属ペーストの低融点化

など、様々な産業への応用展開が期待されています。既に実用化されている工業製品も多く、ナノ粒子の持つ機能性が重要な役割を果たしています。

量子サイズ効果

ナノ粒子の中でも粒子サイズが特に小さいもの(概ね10nm以下)は、ナノ粒子の中の電子の振る舞いが変わってきます。

ナノ粒子という小さな空間内に電子が閉じ込められるために、電子の動きが制限され、エネルギー準位の離散化、バンドギャップの増大が生じます。その結果、ナノ粒子では、バルク(固まり)やミクロンオーダーの粒子とは異なる性質(吸収端の短波長化や、発光波長のブルーシフトなど)が見られるようになります。

つまり、粒子のサイズをうまくコントロールすることによって、物質中の電子の振る舞いを制御し、同じ物質でも性質を変えることができるようになるのです。

これは画期的なことで、これまでに性能が足らずに使えなかった材料でも、ナノ粒子化することによって使えるようになる可能性が出てくるのです。

例えばある工業製品の材料では、性能を得るために何種類もの物質を使っていたものが、粒子径の異なる1つの物質で実現できるようになります。

工業製品で使われるたくさんの物質の中には、高価な材料や、資源が少なく貴重な材料、環境に負荷がかかってしまう材料があります。それらの材料を、安価で、資源的にも豊富で、環境に優しい材料を「ナノ粒子化」することによって代用できる可能性があり、当研究会でも重点テーマとして取り上げられています。

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